Project
2015年に創業した「奈良のいちごやさん」。
代表は、それまで税理士事務所、高級時計販売、大手飲食業の新規立ち上げなど、農業とは無縁のキャリアを歩んできました。
そんな中で、奈良県のブランドいちご「古都華(ことか)」と出会い、農業の世界へ参入。
栽培難易度が高く、当時はまだ知名度も低かった古都華の栽培に挑戦していきます。
しかし、その後テレビや雑誌などで古都華の認知が広がり始めると、栽培農家も徐々に増加。
市場が広がる一方で、別の問題も生まれていました。
「古都華なら、どこも同じに見える」つまり、“農家単位で選ばれない”状態です。
実際、味や品質には自信がある。
ただ、それが「なぜこの農家を選ぶべきなのか」という理由として整理されておらず、
価格比較に巻き込まれやすい状態になっていました。
当初のご相談は「デザインリニューアル」でした。
しかし、ヒアリングを重ねる中で見えてきたのは、見た目の問題ではありませんでした。
本当の問題は、「何が独自性なのか」「なぜ選ばれるべきなのか」「どのような存在として認識されたいのか」
この「判断構造」が整理されていないことにありました。
そのため、単なるサイトリニューアルではなく、「市場の中で、どう選ばれる存在になるか」
というブランド構造の整理から伴走支援を行うプロジェクトとしてスタートしました。
起きていた問題
古都華市場が拡大する中で、農家ごとの差別化が難しくなっていました。
もちろん、栽培技術や品質へのこだわりによって味の違いは出ます。
ただ、それだけでは「決定的な違い」として認識されづらい。
さらに、各農家がパッケージやデザインを工夫し始めたことで、「見た目の違い」は増えていました。
ただ、それは「区別」であって、「選ばれる理由」にはなっていませんでした。
結果として、「価格比較されやすい」「農家単位で認識されない」「指名されづらい」「ファン化しづらい」
という状態が起きていました。つまり問題は、「魅力がない」ことではありません。
魅力が、「判断理由として整理されていない」ことでした。
最初に整理したのは、「何を作るか」ではなく「どう認識されたいか」
プロジェクト初期に行ったのは、デザイン制作ではありません。
まず整理したのは、
・どの市場で戦うのか
・誰に選ばれたいのか
・何を価値として届けるのか
・なぜ、この農家を選ぶ必要があるのか
という「市場認識」でした。
ヒアリングを重ねる中で見えてきたのは、
このブランドの核が「農業」ではなく、「覚悟」にあるということでした。
代表は、農業経験も家業もない状態から、この世界に飛び込みました。
つまり、「奈良のいちごやさん」というブランドは、「誰に何を言われても、この事業をやり切る」という覚悟そのものだったのです。
私たちは、この「内側にある価値」を、市場で認識される形へ翻訳することを重視しました。
最初に整理したのは、「何を作るか」ではなく「どう認識されたいか」
このブランドでは、「流されないこと」を重要な思想として整理しました。
市場に合わせて価格競争へ流されるのではなく、「誰に届けるのか」「どの価値を大切にするのか」
「どんな存在として認識されたいのか」を、一貫して整理していく。
その思想を、ビジュアル・言葉・発信すべてに統一していきました。
特にビジュアル面では、「奈良・和・日本・緊張感・気品」を重要なブランド要素として整理。
名刺やパッケージには、「いちご」と「日本」を象徴する「赤」の縦帯を配置し、その中にセリフ体のロゴを設計。
ロゴマークには「叶」の文字をモチーフとして取り入れました。
これは単なる装飾ではなく、「自分の信じた道を貫き、実現していく」というブランド思想を、視覚構造として整理したものです。
ブランド設計後は、Webサイトやパッケージをはじめとする販促物、言葉遣い、写真表現など、顧客接点全体を一貫して整理。
単発のデザインではなく、「どこで見ても同じ認識になる状態」を目指しました。
重要だったのは、「映えること」ではありません。
「この農家は、何を大切にしているのか」が伝わる状態をつくることでした。
2019年のプロジェクト開始以降、Web・SNS・パッケージ・販促物まで一貫した発信を継続。
その結果、Instagramフォロワーは7,000人を超え、売上200%増(2019年比)を記録し、
飲食店からの指名増加、リピート増加新規相談増加といった変化が生まれました。
特に大きかったのは、「価格以外の理由で選ばれる状態」が生まれたことです。
有名かき氷店をはじめとした飲食店からの継続発注が増え、ふるさと納税、三越伊勢丹ふるさと納税、JALモールなど、
外部企業からの声掛けも増加。いつしか、さまざまな方々から助けていただける存在となりました。
また、「SNS講師としての登壇や若手農業者コミュニティ会長への推薦など、
市場の中での「認識ポジション」そのものが変化していき、2026年に奈良県指導農業士に任命される予定です。
これは単に「フォロワーが増えた」という話ではなく、
「奈良のいちごやさん」という存在が、市場の中で「選ばれる理由を持つ農家」として認識され始めた結果です。
このプロジェクトで行ったのは、単なるデザイン制作ではありません。
整理したのは、「なぜ価格比較されるのか」「なぜ魅力が伝わらないのか」「なぜ指名されないのか」
「なぜ認識が埋もれてしまうのか」という「原因」です。
そして、誰に・どんな価値を・どのような存在として届けるのかを、市場の中で伝わる構造へ整理していきました。
結果として、「農家」ではなく、「選ばれるブランド」として認識される状態へ変化していきました。
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